メモリーカードを忘れたことに気がついたのは渋谷に着いたのとほぼ同時で、そのせいでそこから吉祥寺に出るという選択肢はあっけなく潰えた。肩に提げたカメラがこのまま無用の長物になってしまうのもしゃくなので、ビックカメラで買うことにしたが、思ったより高かった。たぶん秋葉原だったら半額近くで買えたかもしれない。
空は暗く、ときおり霧のような雨がぱらつくあいにくの天気。本格的な雨を降らさないでいてやるんだから我慢しろといわんばかりの傲慢な気候だ。
昨日歩いた道を再現する感じで、宮下公園から青山方面。いきなり渋谷には戻らずに、原宿、そして山手線の外に出てNHK前。降らない雨の瘴気が疲労となって固着して、鍋島公園で早くもダウン。池の端のベンチで休憩する。
近々池にすむ生物たちの調査をするらしい。どの生物が何匹くらいすんでいるのか。日本固有の生物と渡来した生物の割合はどのくらいか。そんなことは露とも知らず大きな亀たちが悠然と泳いでいた。中央ヨーロッパあたりらしき言葉を話す金髪の子供たち3人と彼らの連れの大人たちが池の周りを散策している。彼らも調査対象かもしれない。
東京大学の駒場キャンバスに潜入する。休日のキャンバスはとても静かで、どれが東大生または職員でどれがもぐりかをあてるゲームはできそうもなかった。
西の空はすでに明るくなっていたが、いまここではときおり雨がぱらつく。いわばあの光は未来の光なのだ。その予見通り、下北沢では日射しが出迎えてくれた。
下北沢ではかなりのおじさんと二十歳前後の女の子のカップルを二組も見かけてしまった。おじさんの方はロマンスグレーとかではなくかなり無理して若作りしている印象で、髪は脱色していて、原色のTシャツでぷっくりしたおなかに彩りをそえていた。でも女の子の方はほんとうに楽しそうな笑顔をみせていて、手がつながれたり離れたりする感じがとても微笑ましかったのだ。よくわからないけど、がんばってほしい。
メニューのカレーに惹かれたので、北口駅前地下のPIGAというカフェに入ってみた。チーズカレードリアはさくさくとした歯触りがよくておいしかったが、つけあわせのピクルスがとても気に入った。浅漬けで酸味が少なくてヨーグルトみたいな香りがする。カプチーノはエスプレッソベースではなくふつうのコーヒーベースだが、悪くない味だった。
左側のテーブルで話していた結い上げた髪で和服姿の女性二人組は、テレビに出たりするような人らしく、こんど出るイベントのチラシを店の人に託していた。下北沢は舞台の上と下が同じ平面でつながるメビウスの輪のような街なのだ。
そのあとは芝居。終わってから外に出るとまた雨がぱらついていたが、それはさっきまでの雨の残りというよりも、たぶんいい芝居の後は雨というジンクスのせいだった。


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