22時過ぎの変な時間からはじまる芝居をみにいくためにぼくは渋谷で電車を降りた。ふつうならそこから劇場まで歩くのだが、今日は連れがいるので電車に乗ることにした。乗り換えの近道をするため古びた日本家屋を通り抜けようとするが、昼間はあいていた通路がふさがれている。不安にかられながら迂回しようとすると、つきあたりのところで見知らぬおばさんがこちらをいぶかしげに見ている。
なんだかんだで電車に乗り込むことに成功するが、もう時刻は23時をすぎていた。開演に遅刻だ。いつの間にか連れは別の人物に変わっていて、遅れたことを説明しようとするうち、電車は下車駅を通り過ぎている。ますます遅刻だ。次の駅で下車するとぼくは一人きりになっていた。
という夢から目覚めて、ぼくが向かったのは有楽町。駅を出て新橋方向に進みJR高架下のインターナショナルアーケードの中に入り込む。空気がこもって外より暑かった。薄暗さや薄汚れ方が、夢の中で通った通路を思い出させる。
遮るもののない日射しの下にそびえる官庁街、そして国会議事堂。このあたりは東京というリアルな街の中心ではなく、日本という仮想の国の空虚な中心だ。長時間露光で写真を撮れば写る人は立ち番をしている警官たちだけだろう。
へろへろべちょべちょで市ヶ谷到着。夢同様芝居をみるため、JRで渋谷に向かう。夢とはちがってちゃんと遅れずに渋谷に着いた。
食事をすませたあと、まだ時間があったので東急ハンズで鞄をみていたら、須田帆布の製品にぐっときた。昔、吉田カバンの製品が好きだった時期があったが、今や完全にブランド化して、値段が高いし、デザインもコンサバになってきた。須田帆布は値段も手頃だし、シンプルな色合いや機能美にあふれた形状が気に入った。というわけで魚屋で魚を買うように生きのいいやつを選ぶ。
劇場の真下にある本屋リブロでさらに時間をつぶしてからエレベーターで上に上がろうとしたら、その中になな何と小泉今日子さんが乗っていた。アイドルとしてのキョンキョンには興味なかったが、女優としての小泉今日子はかなり注目しているのだ。ワウ!と歓声をあげそうになったが、ちゃんと都会人らしく知らんぷりを決め込むことにした。どうやら、ぼくと同じ芝居を見に来たようだ。前の方の座席につくところを目撃した。
終演後外に出ると、ぼくを包んでいた芝居の余韻は熱帯夜に吹き飛ばされた。パルコの前では霧のようにミストが噴出されていて、それを浴びてひとときの清涼感を得る。


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