海まではまだ直線距離で2kmくらいあるんだけど、辻堂駅前からのびる商店街にはすでに海辺の開放感がただよっていた。潮風は期待をはらんで沈殿しがちな寂れの成分を吹き飛ばしている。今日もまだ、昨日の涼味が残っていた。
その商店街を進むうちにいつの間にか茅ヶ崎市に入っていた。はじめて歩く茅ヶ崎市、王国の領土はどんどん西へと広がってゆく。
海岸にたどりつくと、太陽が眠い目をこすっていた。砂浜に足をとられて、ほんの目の前の場所までたどりつくのにひどく時間がかかる。海岸に療養にやってきた人みたいに波打ち際までこわごわと近づいて、それだけで十分満足して去ってゆく。あとは砂浜の縁の舗装された道を東へ。
中途半端な日射しにやられて休憩していたら、妙な三人組の姿が目に入った。男一人と女二人。そのうちの男女がカップルで、肩車したり、海中で水をかけあったりと、忙しい。残された女性は砂浜に敷いたシートの上に座ってただ海をみていた。
海辺を離れて、空気が変わったことに気がついた。かなり湿度があがっている。いきはよいよい帰りは怖い、だ。鵠沼海岸駅の周りのコンビニにはミントジュレップは売ってない。
結局、汗だくで藤沢駅にたどりつく。これまでは駅の周りだけだったが、今日は南側のイトーヨーカドーや東急のほうに足をのばしてみた。探検しがいのありそうな場所だが、今日はとりあえず法華クラブホテル地下モールで食事をとる。
駅前に祭り囃子が近づくと、街路樹で休んでいた大量の雀たちが恐慌をきたしてにげまどいはじめた。太鼓の音に反応しているのだろうか。まさに夜空を覆い尽くさんばかりで、ヒッチコックの『鳥』を連想させた。逆に、世界中の鳥がいなくなってしまうという映画か小説があったような気もするし、なかった気もする。
探している本が藤沢でも横浜でもみつからなかった。


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