快適な秋の日射しが街をオレンジ色に染め上げていた。
日野駅前から西北西にのびる道、子犬のように左手につきそってくる水路は、昨日までの雨を受けて激しい勢いで流れている。いつまでもついてくるかに思えた水路も谷地川という一級河川に吸い込まれ、ぼくもまたその先で右折した。
ぼくの視線の先にあったのは多摩川にかかる多摩川大橋だ。真紅の流線型のフォルムが青い空に映える。橋を渡った向こう側は昭島市。新奥多摩街道と奥多摩街道の間のものすごい高低差を解決するのはたった一本の橋状の坂道で、まわりは崖が屹立するおもしろい地形だ。やがて中神駅にたどり着く。さすがにまだ歩き足りないので、踏切を渡って北口へ。この延長戦がよかった。
なんの前触れもなしに青みがかった舗装と曲がりくねった道の遊歩道があらわれ、かすかなメルヘンを残して、あらわれたときと同じように消える。小さいけど深い川にかかる橋をわたると広大な団地を縁取る温泉街みたいなさびれた商店街につながる。
公園の中から狙い澄ましたようにぼくの足下に野球のボールが転がってきた。拾い上げて、公園の中でグローブを構える子供に投げ返したが、そのぎこちなさに我ながら苦笑する。案の定、手前の自転車のところで急降下してしまったが、ワンバウンドながら無事届くことは届いた。それで思い出したのが、子供の頃、道で友達とキャッチボールをしているときのことで、そこに別の同級生の母親が通りかかったが、ボールの行き来する方向とは角度がずれていたので、ぼくはかまわずボールから手を離したのだった。ところが、それが向かったのはまっすぐその母親の顔。寸分の狂いもないコントロールだった。そのあとの記憶はない。たぶん、一生で一度のナイスピッチだった。
戯れに枕から綿をとりだしてばらまいたような雲にピンクの夕日があたって輝いていた。何かが何かを勘違いして祝福しているような空だった。そして、9月だというのに鯉のぼりが二尾、大きいのと小さいのが、干物のようにつりさげられている。
西武拝島線の武蔵砂川駅でこの奇妙な旅は終わる。新宿へ。


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