隣のホームで発車メロディーが鳴り響き、ドアが閉まる。ぎりぎりの時刻に発車する京葉線各駅電車に、動く歩道やエスカレータを疾走して、あともう少しで乗り込めそうだったのだが、最後の最後で隣のホームに降りてしまった。おかげで次の電車まで17分のロスだ。17分あれば昼が夜になり少女が母になる。もちろん、ほかの惑星のほかの生物の話だが。
京葉線各駅電車で3駅目、潮見駅から歩き始める。
今年惜しくも亡くなった市川準監督の『東京マリーゴールド』で田中麗奈と小澤征悦が渡っていた人道橋しおかぜ橋を渡る。彼らが逢瀬をかさねるためのセカンドハウスが近くにあるという設定だった。江東区の臨海地域を歩く度にこの橋のことを思い出してはいたが、渡るのはほんとうに久しぶりだ。ビルとビルの間という意外な場所から橋は始まり、妙に折れ曲がったり、上り下りがあったり、分岐しながら運河を渡る、かなり絵になる橋だ。
東陽町あたりから南砂町、永井荷風が随筆でとりあげられている元八幡通りをぬけて、地上に顔を出した地下鉄東西線と併走し、空をかけるビームが美しい清砂大橋を渡って、今年1月以来二度目の江戸川区侵入。
そのあたりではじめたばかりのダイエットのことを思い出し、それまでの平和的でとぼとぼ歩きから、戦闘的でアグレッシブな歩きに移行する。胸元の携帯電話がカバンのショルダーストラップにあたって悪い予感がしたが、まあ平気かなと、リズミカルに進んでいく。
橋を渡りきって北上。闇の中に胸元の携帯電話からの光がもれる。ありゃとのぞき込むと、勝手にどこかに通話している。あわてて中断して履歴を確認すると、なんと4件も発信して散歩を実況中継していた。持ち主に似合わず社交的なやつだ。ご迷惑をおかけした人、すみませんでした。
携帯を不器用にいじりまわしてるうちに目の前に都営新宿線船堀駅の高架が浮かび上がる。江戸川区では地下鉄も地上を走るのだ。
そして、久しぶりの神保町。年末に読む本を選んだ。

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