トツカカントリー

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朝方ものすごい雨音が夢と現実の境を侵犯してきて、それが夢でなかったことは目が覚めたときの部屋の暗さが保証してくれた。予報はクモリトキドキアメ。そのトキドキが、トキくらいなのかトキドキなのかそれともトキドキドキなのかによって状況はまったくちがってくる。

またしてもというかいつも通りというべきか、とにかく出遅れたので、フロンティアを求める冒険心と近場で済ませようとするコンビニエンス気分との妥協をはかって東戸塚から歩き始める。

周囲の町名は品濃町とか川上町というのだが、東戸塚という駅名からはそういう土着性や歴史性を感じさせる要素はきれいさっぱり消されている。駅前の風景も同じで、全国展開の真新しい大型店舗がたちならぶ。東側の巨大なオーロラシティーほどではないが、今日降りた西側も同じ傾向だった。

西口の駅前から西方向に向かう道路を道なりに進み、横浜新道が右手に寄り添ってきたところで、その下を通り抜ける。小川が並行するのどかな風景からだんだん両側に山がせりあがってきて、何ヶ月も切っていない髪みたいな鬱陶しさで、木々が覆い被さってきた。さきほどから雲が切れて日射しがのぞいているのはうれしいのだが、起伏の多い道のりを進むうちに汗がにじみだしてきた。ああ、こんな道が続くなら、ロボットか何かに代わりに歩いてもらって、風景が変化したところで、またバトンを渡して欲しいくらいだ。

やがて山は高いネットに変わる。ネットの向こうはトツカカントリーという別の国、習慣がぜんぜんちがうのだ。まず、向こうではオフの時のプロ野球選手の服装がドレスコードになっている。さらに、こちらがわではお金が多ければ多いほど尊敬されるのに、向こう側では「スコア」と呼ばれるものが少なければ少ないほど崇められる(ただし、かなりの場合、こちらがわに出るときにお金に変換される)。眼下には気持ちよさそうな緑の芝生が風にそよいでいたが、もちろん、自由に国境を越えることはできない。会員権というグリーンカードのようなものを手に入れるか、あるいはそれを持つ人と友達にならなくてはいけないのだ。

国境線沿いを歩いている間に、もうひとつ別の境界をこえて、戸塚区から旭区に入った。さらに道沿いに、都塚を示す標識があって、その示す先の塚には小さな祠がある。そこは相模国と武蔵国の境界で、往事には鎌倉も見えたらしい。ちょっとのぼってみたが、鎌倉どころでなく、ゴルフ場の芝生以外何も見えなかった。

長い蛇行の末ようやく交差点がみえたので、迷わず右の静かな道を選ぶ。どこか上空でウグイスが鳴き、猫がワゴンの天井でまどろみ、オナガがギーギーとハスキーな声を出す。その道はなんだかとてものどかで、田園生活というのはこういうのをいうんだろうと思った。

再び広い道に出て、なんとなく右手に進むが、行く手が保土ヶ谷というのをみて、もときたほうに戻るような気がして、林に沿った細い上り坂にそれた。なんだか、いつ行き止まりになってもおかしくなかったが、どうにか道は続いていき、保土ヶ谷バイパスをくぐりぬけ、やがて広大な左近山団地の一角を通過した。

そのあたりでぽつぽつと落ちてきた雨は、弱まることを知らず、あわてて掲げたぼくのカサをたたき続けた。そのリズムは蛍の光のように散歩の終わりを告げていた。ナビウォークで検索すると、相鉄線の鶴ヶ峰駅までだいたい1kmくらい。素直にその指示に従うとみせかけて、最後の最後に旭区役所の方に寄り道をするが、商店街をぬけて結局は鶴ヶ峰駅。

横浜に出た。スタバで隣に座っていた試験勉強中のあまり頭のよくなさそうな男子高校生が、コモンローは、人名だと思っていたという。そうそう、あとオオモンローというのもいて、二人で凸凹漫才コンビをくんでいたんだけど、やがてアメリカの政界に進出して大統領になる。二人が唱えたのがモンロー主義。どう?勉強になったかな。

天気
曇り一時雨
散歩
東戸塚駅〜戸塚カントリークラブ〜旭区役所〜鶴ヶ峰駅(9.0km)-[地図]
写真
2/6
飲み食い
カレーハウスリオ(横浜):ポパイカレー-680円
スターバックス(横浜ビブレ):カプチーノ-420円
買い物
タワーレコード(横浜):Bill Evans/Alone, Terry Riley/In C - 3065円

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