馬喰町という駅の名前と読み方[ばくろちょう]を子供の頃知っていたのは、当時「国鉄」でもっとも低い位置にホームがある駅だと、子供向けの本に書いてあったからだ。今では、JRでもっとも低い駅は青函トンネルの中に移動してしまったらしい。あの頃のぼくにその話をすると、どんな顔をするだろうか。
長いエスカレーターをのぼりきると、アパレルの問屋街。休日なので人通りはほとんどなく、カラフルに舗装された歩道と閉ざされたシャッターの列。華やぎとうら寂しさが同居する妙な街だ。
雨は、降っているみたいと降っていないみたいの間を絶えず揺れ動いていた。人、というかぼくは、カサをささなくてもどうにか平気なくらいだったが、カメラのレンズが心配だ。ボディーは生活防水なので平気だが、レンズは無防備。今まで無頓着にけっこう濡らしてしまったが、そのせいで買った当初のシャープな写りが損なわれている気がしてしかたがない。とりあえず、大振りなクリーニングクロスでレンズを包み込むことにした。
気ままに道を選択しながら人形町周辺。このままテンションを保ちながら隅田川西岸を銀座方面に歩き続けるか、それとも橋を渡って江東区の平板な街並みに身を沈めるか。暗い空にそびえる清洲橋の迫力に吸い寄せられて、後者を選ぶ。
深川資料館前の商店街。ウグイスの糞を売っていた店のシャッターは下りていたが、ちょんまげ姿の土産物屋のおじさんは今日もにこやかに通りかかる人に挨拶をしていた。
ずいぶん歩いたような気がするのに、時間はどこかで道草しているらしく、意外に経過していなかった。雨脚が心持ち強くなってきたので住吉駅で散歩を終えようと思ったが、もうひとふんばり錦糸町まで歩いた。[馬喰町駅〜日本橋劇場〜清洲橋〜住吉駅〜錦糸町駅(7.4km)-[地図]]
東京駅に出る。食事[アルプス(八重洲地下街):カツカレー-450円]とコーヒー[スターバックス(八重洲地下街):アイスラテ-420円]と本一冊[丸善本店にて入不二基義『相対主義の極北』-1470円]。
帰り道、風邪薬を買う。

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