いまいましいことに、予報通り、冷たい雨。でもそれが雪に変わることはなく冷たい雨はどこまでいっても冷たい雨のままだった。
散歩はあきらめて、美術展でもいこうと思うが、適当なのが見つからない。今日は買い物だけして帰るかと、電車に乗り込み、iPhoneをいじっていたら、楊福東(ヤン・フードン)という名前にぶちあたった。どこかで聞いたことのある名前。そう、何年か前、森美術館で開催されたハピネス展という展覧会に出展されていた『下級兵士YYの夏』という映像作品のディレクターだった人だ。ぼくはある若い中国人女性のユニークでユーモラスな夏を描いたこの作品がとても気に入って、都合3回もみてしまった。あれと同じ人の作品なら是非ともみたい、と思い原美術館にいくことにした。品川から京急で一駅横浜方面にもどり北品川で下車して、国道15号をわたり坂をのぼり、JRの線路を陸橋で越えると、いきなり緑が深まり、雨音以外の音が静寂の中に退く。原美術館はその先で右手に曲がったところにある。
楊福東は思っていたのと全然違った。全部で5作品、3編はストーリー性を感じる純粋な映像作品。1時間弱の比較的長めのもの、30分弱のもの、7分の短編。残りの2つは、複数の画面から構成されるヴィデオインスタレーションだ。なんかどれも過度に男性的というか、武骨な感じで、女性が登場してもそれは明らかに男性の視点から描かれているのだ。むしろ、YYの夏の、ガーリーでユーモラスで都会的な感覚はどこからでてきたのだろうか、と逆に不思議に思った。
一番印象に残ったのは、『竹林の七賢人 パート3』という作品で、牛を実際に殺す場面だ。脳天を石斧のような鈍器を振り下ろしてたたき割っている。確かにショッキングなんだけど、不思議に残酷さはあまり感じなかった。牛を殺すことに罪があるとして、それは苦しみの時間に比例するような気がした。
相変わらずの冷たい雨の中品川まで歩いて戻り、そこから先はショッピングアワー。まず、iPhone を契約したときにソフトバンクからもらったギフト券をようやく3枚使って、丸の内の丸善でフリッツ・ライバー『跳躍者の時空』を買った。ギフト券を使える店はぼくは頻繁に利用する店と微妙にずれていて、なかなか使う機会がないまま、だんだん大事な買い物のときでないと使ってはいけないような気分になってきて、あやうくサイフの肥やしになりそうだったので、何気ない買い物で何気なく使ってみた。お釣りもでるそうなので、もっと気軽に使えばよかった。
その後、アルプスで牛すじカレー - 450円を食べたりスタバでチャイティーラテを飲んだりしながら、いい加減くたびれてきた散歩の必需品、カサとスニーカーを新調し、最後にワインを買って帰ったのだった。おしまい。
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