月に吠える

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急行電車をどんぴしゃのタイミングで乗り継いで中央林間にたどりついた。駅前のカジュアルなにぎわいを通り過ぎると広大な工場の敷地の縁。IBMとレノボの名前が併記されていた。

目指す遊歩道の入口にたどりつく。8ヶ月前に入り込んで途中で離脱してしまった遊歩道。今日は、最初から最後まであるいは最後から最初まで歩き通すつもりだ。

とはいえ、遊歩道の風景は退屈だ。どこまでもどこまでも両側にはただ平板な住宅が並んでいて、ただ時折垣間見える電柱の住居表示だけが変化していく。やがてそれは東林間に変わった。歩き始めた中央林間は神奈川県大和市だが、東林間は相模原市。遊歩道は、これから延々と相模原市を通り抜けてゆく。

見たことのある風景。ちょうどこの前離脱した相模大野駅付近だ。これはぼくの特殊能力と言っていいと思うが、一度歩いた道は忘れない。といっても細部まで記憶していているわけじゃなく、漠然とした印象を圧縮して保持している。それで役立つことは、迷子にならないことくらいで、むしろ退屈になるというデメリットの方が大きい。そんなわけで、これからしばらくは既視感という退屈な道連れといっしょに、前回とは逆の視点と順序で歩いていく。

いきなり風景のサイズが変わる。両側の住宅が退いて、林地にはさみこまれた。細くてひょろひょろとねじまがった樹たち。今は葉を落として、修行中の僧侶たちみたいに禁欲的だ。そこがこのコースのクライマックス。樹たちの聖歌が耳に聞こえてきそうだった。

その木立をぬけた先が未知の領域。といっても、一応名目上は遊歩道が続いていることになっているが、相模原ゴルフクラブに接した道路の歩道の部分に木が植えられているだけだ。その中には梅の木が混ざっていて、早くもいくつかは花が開いていた。白梅、紅梅。春はもう手が届くところまできている。

途中の標識がそろって淵野辺公園まであと何kmと表示していた。たぶん、そこがこの遊歩道の終着点なんだろう。一番最初にみたときは4kmになっていて、はるか遠くという感じだったが、いつの間にか1.3kmになり、そして500m。秒読みが始まる。夕闇が濃くなってきた頃、公園の中に入り込んだ。

テニスコートはいうに及ばず、レクリエーション施設や野球場もある大きな公園だった。樹がライトアップされていた。なんと、公園を通り抜けた先にまだ遊歩道が続いていた。名残を惜しむように歩を進めるが、大きな道路にぶつかったところで、ほんとうのほんとうに終わりを迎えた。

満月が東の空に出ていた。ビルの上くらいの高さなのでやたら大きく見える。薄雲に包まれてあやしいセピアカラーに輝いている。月じゃなくほかの天体が浮かんでるみたいだった。こんな光に照らされたら誰でも体中に銀色の毛がはえて、牙がつきだして、狼男になっちゃうような気がした。考えてみると、狼男は英語で "werewolf"、仮定法過去のbe動詞 "were" が含まれている。狼男とは、ありえたかもしれないほかの現実の可能性を夢みる仮定法の亡霊のことなのかもしれない。

にぎやかな大通り沿いに、JR横浜線の淵野辺駅まで。[中央林間駅〜遊歩道〜淵野辺公園〜淵野辺駅(12.5km)[地図]]

町田に出た。食べるものを求めて歩き回るが、なかなか見つからない。店はたくさんあるんだけど、微妙にひとりで入りにくかったり、食べたいものとちがったりするのだ。結局、前回町田にきたときと同様フレッシュネスバーガーに入った。クラシックチーズバーガーとキャラメルマキアート、しめて950円。なぜかドリンクがぬるいのも前回と同じ。

町田は去年1回しか来てないのに、今年はまだ1月なのに2回もきている。ひょっとすると今年は町田が個人的にブレイクするかもしれない。行動半径を少しずつ広げるようと、はじめて小田急線の北側の西友にはいってみた。レコファンとかリブロが入っている。それなりに使えそうだ。あとは、やはり食事する場所をうまく見つけなければ。

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